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2015年02月号 vol.2

アートなアジア!「ネパール編:Part.1 ナマステ!ネパールの世界遺産~寺院と街~」

2015年02月26日 05:14 by 匿名
2015年02月26日 05:14 by 匿名

小さい国とはいえ、ネパールの世界遺産は4つも登録されています。

そのうち2つは、自然遺産(サガルマータ国立公園、チトワン国立公園)で、2つが文化遺産(仏陀の生誕地ルンビニ、カトマンズの渓谷)です。仏陀の生誕地ルンビニは、仏陀が生きたルートとしてインドとともに語れることが多いので、今回はこの「カトマンズの渓谷」に焦点をあててみます。

ネパールの首都カトマンズは、盆地のような構造になっており、カトマンズ盆地とも言われます。近代化してきた昨今では大気汚染が深刻化しています。マスクをしないで1日外を歩くと、翌日には声が出なくなるほどです。現地の人々もマスクをしています。ここは、カトマンズ市、パタン市、バグタプル市の3つの市で構成されています。


その昔、15世紀にマッラ王朝の時代に、ここには3つ(カトマンズ・パタン・バグダブル)それぞれに王子を置いていました。3人の王子たちは「自分たちの方がより凄い、強い」という思いから、さまざまな宮殿や寺院を建立し、その美しさや技術を競い合ったのです。
そのため、カトマンズ・パタン・バグダプルそのどこにも、「王宮広場(ダルバール広場)」なるものがあります。そして、その競い合いの文化の中から、現在の「ネワール文化」が形成されていったという流れが出来てきます。


古都バグタプルは「帰依者の街」と言う意味を持ち、古くからの建物を壊さず大事に今も使用しており、大変に妖艶な空気をかもし出しております。映画「リトル・ブッダ」で撮影に使われた町だそうです。
また、ネパール名物のヨーグルトは、ここで作られるものが一番美味しいそうで・・・。行く予定がある方は是非ご賞味あれ。

パタンは「美の都」と言う意味を持つそうで、古くからネワール族の町として、彫刻・絵画などの芸術性が非常に高いエリアとして知られています。

そして現在の首都でもあるカトマンズ。ダルバール広場(王宮広場)を中心に、町がどんどんと近代的に広がっていっています。このダルバール広場の中に、生き神であるクマリが生活をしている「クマリの館」があり、運がよければクマリに会うことが出来ます。

クマリは女神です。この現代においてまだ「生き神さま」を祭っていると言うのもなかなか貴重なことだと思います。クマリは「ネワール仏教の僧侶カーストであるサキャ」の中から選ばれるそうです。
初潮を迎えると同時にその役割を終えるそうですが、クマリである間は、館から出ることを許されず神として生きなければいけないため、クマリの役割を終えた後の「元クマリ」さんの人生はなかなか大変なものになるのだそうです。2008年の王制廃止とともにクマリの存在を続けるかどうか・・・と言うことについては、今のネパールでは賛否両論あるのだそうですが、この文化がいつまで続くかどうかは、、それこそ神のみぞ知る、と言うことなのかもしれませんね。

さて、このカトマンズの周辺には3つの大きな寺院があります。
1.ボダナート 2.パシュパティナート 3.スワヤンブナート
ボダナートやスワヤンブナートは、ネパールを象徴する寺院として人気があります。

ネパール最大の仏塔がある聖地ボダナート
大きなお餅のようなストゥーパ(仏塔)を持つボダナート。チベット仏教徒の巡礼地であり、チベット文化の中心地とも言われています。その仏塔には四方に「目」が描かれています。ハルミカといわれるこの部分の目は「世界を見渡す仏陀の目」と言われています。何ともキュートに見える形をしているのですが、この目は今まで一体何を見て、そして何を見据えているのでしょう?
ストゥーパの周りには、マニ車が配置されています。マニ車を一つ一つ回しながらストゥーパ(仏塔)を右回りに一周することで、お経を全部よんだと同じ事とされるそうです。
たくさんの方々が右回りにぐるぐるしているので、最初は驚く光景かもしれませんが、一緒になってまわってみるとなぜか清々しい気持ちになるのです。

 
 
この写真の旗のようなものって何かご存知ですか?
日本の神社にも似たような色使いのものがあるような・・・?
これは、チベット仏教の寺院には欠かせない「タルチョー」と言われるもので、いわゆる「五色」の旗といわれるもので、色の順番も決まっており青・白・赤・緑・黄となっています。
それぞれが天・風・火・水・地に対応しており、いわゆる世界を構成している要素と言うことになります。
チベットに仏教が伝わる前から、チベットでは「祈祷旗」として使われており、寺院に写真のように設置し、
風で旗がなびけばお経を読んだことになるというありがたい旗なのです。

そして、その周囲には取り囲むように巡礼者向けや観光者向けのお店がたくさんあります。
その煩悩な世界と聖なる世界の境界線に祈りを捧げるものたちがぐるぐる回っている。
何ともいえない人間世界がそこにはあります。

 

カトマンズの街の東側にあるボダナートの真反対の西側にそびえたつのがスワヤンブナート。
こちらもやはり大きなお餅のようなストゥーパを持ち、基壇の部分には四方に目が描かれています。


まだカトマンズが湖だった頃からここにそびえたっていたと言う伝説を持っています。
ここはかなりの高台にあり、下から登るとかなりの段数の石段を登ることになります。
ここには、大日如来が安置されています。日本の大日如来と比べてみるのも面白いですね。
スワヤンブナートから見るカトマンズ盆地の景色は圧巻です。

 

そして、ネパール最大のヒンドゥー教寺院であるパシュパティナート。
ヒンドゥー教では、死者は火葬し河に帰します。そのためこの寺院もガンジス河の支流であるバグマティ川の岸に建てられています。火葬のガートでは、一日に何体も死者が焼かれていきます。その光景は何とも神々しく見た者にしかわからない独特の感情が沸き起こることでしょう。
ヒンドゥー教はそもそもは「インド人の宗教」という意味を持つそうなので、インドの宗教として有名ですが、このネパールにもヒンドゥー教徒の方はいらっしゃいます。
この寺院には、たくさんの猿たちもいます。猿に持ち物を取られないようにするのも注意どころです。。。


そしてネパールには「タンカ」と言われるチベットの仏画があり、画家たちがその腕を競っております。美術館などでその絵画の素晴らしさを感じてみるのもいいですね。
他には、石造彫刻、彫金技術などマッラ王朝時代に最盛を極めた素晴らしい技術がたくさんあります。
マッラ王朝が滅びるとともに衰退していったとされていますが、また近年伝統文化を見直し再生するプロジェクトが栄えてきています。

 

アート作品だけを切り取ることが出来ないアジアのアートの世界。
そのエリアの生活・習慣・宗教などとともに味わうことこそが、一番のアート鑑賞なのだと思います。

アジアの中では比較的行きづらい国ではありますが、日本からは中国やタイ、インドなどを経由して首都カトマンズに行くことが可能です。

一生に一度は見てみたいと誰もが思うヒマラヤ山脈もありますし、人も穏やかでのんびりとしています。
現代日本の生活習慣から考えると、とても原始的な生活をしている国ではありますが、無駄がなく質素で、人間の心は豊かに生きているようにさえ感じます。
そんなネパールの妖艶な魅力を少しでも感じていただけたのなら嬉しく思います。

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