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2015年03月号 vol.3

アートなアジア!「ネパール編:Part.2 ダンニャバード!ネパール雑貨の楽しい世界」

2015年03月30日 11:28 by 匿名
2015年03月30日 11:28 by 匿名
アートと言うと、ちょっと違うかもしれませんが、今回は商品の話になります。
どこまでが作品?商品?という線引きは難しいですね。どこまでが価値のあるもので、どこまでが土産物なのかもこれまた難しい線引きです。そんなお話です。

アジア雑貨はとても人気ですが、その多くはネパール発祥のものが多いということを皆さまご存知でしょうか?アジア雑貨の中でもネパール雑貨はとても人気があり、ネパールからタイへ、そして各国のバイヤーが手に取り自国へと輸入されていくと言うルートも一般的です。

東南アジアでは作ることが難しいのが「毛織物」。
東南アジアの気候は1年中暑いため、毛織物製品はなかなか生まれ辛い環境です。しかしネパールは、標高も高く、寒い時期も多いためさまざまな毛織物商品が発達しています。
ウール商品のバラエティの多さ、そしてそれに刺繍を施す技術の高さ、フエルト商品など、ウールを使った雑貨は世界的にとても人気があります。欧米諸国はじめアジア各国への輸出が活発です。

今、紛争地域の一つとされているジャム・カシミール地域(インド・パキスタン国境)では、とても美しくまた繊細な刺繍で有名な「カシミール刺繍」と言う技術があります。インドやネパールでこちらに出会うことが出来ます。しかし、今は安い雑貨などはミシン刺繍に変わってきています。これは残念ながらネパールに限らず東南アジア諸国ではどんどんと刺繍はミシンに変わり、手刺繍のものを目にする機会は減ってきています。

民族の証を刺繍に施し、自分たちのアイデンティティを守る。刺繍にはそんな役割もあります。
その形の美しさだけを真似て作られる商品が増えていく現実は、何か大切なものを忘れているような、そんな気分にさせられてしまいますね。

さてそのウールですが・・・。
ネパールで人気なウール商品が2つ。
1つは「ヤクウール」。もう一つが「パシュミナ」です。

ヤクウールとは、ヒマラヤ山脈の標高4000~6000kmに生息する牛「ヤク」からとれる毛のことで、厳しい環境で生活をしている牛の毛ということもあり、保温性が高くとても軽く人気のあるウールの一種です。
※ヤクは牛なのに、なぜウールと言うのか?という素朴な疑問も??

いやはやこのヤクウール。驚くほどに暖かいのです。密に織られたヤクウールのストールは風すら通しません。そのじんわりとした暖かさは一度纏うとやめられません。
しかし、最近マーケットを見てみるとニセモノがとても多いことに気づかされます。ウールと称しながら「アクリル」で作られた安価なものもとても多く出回っているのが現実です。
良品ほど偽者が出回るとは言いますが・・・。

そしてもう一つが「パシュミナ」。
10年ほど前にOLさんに大人気を博したストールです。
さて、ここで問題です。 パシュミナの定義って皆さんご存知でしょうか?
カシミアとパシュミナって何が違うの?と思ったことありませんか??

 単純にパシュミナとは「カシミヤ繊維等を糸に紡ぎ、織り上げた、ネパールやインドで伝統的に作られてきたストール・ショールで伝統的には、パシュミナはヒマラヤ山脈に生息するカシミヤ山羊およびその近似種から採取された素材」(※ウィキペディアより)とされています。


実はパシュミナの定義はとてもあいまいで、その原産国であるインドやネパールでもその定義はばらばらです。
日本でも品質表示に「パシュミナ」は使えません。書いてあったとしてもカシミアまたはウールとなります。

何故かと言うと、カシミアもパシュミナも素材となる動物は同じでして、その毛の太さによって「カシミア」と「パシュミナ」は異なると言う説、カシミア山羊の中の喉あたりの細い毛だけを「パシュミナ」と言う説、カシミヤ山羊の子供の毛のことをパシュミナというと言う説、、、と色々と諸説あるんですね。。。

パシュミナ100%のストールは、いずれにしても毛が細いので、とても繊細なため特徴的な織り方をします。その織り方で代表的なものが「ダイアモンド織」です。

⇒注釈)一番右のカーキ色がダイアモンド織りです。

実は、パシュミナが世界的ブームになってから、粗悪品(パシュミナじゃないもので作られた偽モノ)が多く出回り、パシュミナの定義があいまいなこともあり、「ホントのパシュミナってなんだ?」がわかりづらくなってしまったのです。
そこで、パシュミナ風のものではなく「本物のパシュミナ」であると言う証明をしっかりと政府を主体にするようになったこともあり、近年また上質なパシュミナがネパールの市場でも出てくるようになってきました。

それは、パシュミナといえる繊維がいかに貴重なところからも証明できます。そもそも4000m級の高地で生息している毛が大量に手に入るわけもありません。
それだけ貴重な毛で織られているものですから、お値段だってそれなりにするべきものです。

悲しいことに、日本ではアジアの雑貨は「安い」こと、そして民族的なかわいらしさがあるので爆発的にブームになったわけですが、やはり粗悪なものも多かったゆえ、「安かろう悪かろう」という意識が定着してしまっているところがあります。その感覚が、現地での「良質なもの」との出会いを阻む時が多々あります。

世界中のどこでも、本物・良質なものが「安い」わけありません。貴重なものほど高いのは世界共通です。
ですが、アジアを旅する旅行者はとかく高いものを嫌う傾向にあります。そもそも物価の安い国で、いきなり高い値段を言われると、驚くのも無理はないのですが・・・。単純に「ぼったくられる」のを怖がるからなのですね。。

デパートやギャラリーのように、誰かがその真偽を見極め、陳列したところから気に入ったものを手に入れることになれてしまった我々日本人にとって、アジアでの買い物・良質なものとの出会いは、ちょっと難しいことかもしれません。値段交渉の大変さに根負けしてしまう経験がある方もたくさんいらっしゃるのでは?
アジアだけではありませんが、一つモノを手に入れるということはそもそも簡単じゃないと言うことを改めて感じるという醍醐味がそこにはあると思います。

「全ての出会いは、自分の映し鏡である。」
昔、旅をしている時に、誰かから教えてもらった名言です。
旅先で自分が手にしたものたちは、その時の自分を現していると思うと、買い物などの価値観も変わってくることでしょう。

ネパールと言う国は、本当に良質な雑貨・アート作品から、粗悪なものまで色々揃っています。
何を手にするか、、、自分を試されていると思うとなんだか旅行の本気モードも変わってきそうですね♪

話は戻りますが、ネパールで手に入る本当に良質なパシュミナストールは、その軽さと反比例するほどの暖かさ、そのぬくもりの質、全てにおいて最高です。
繊細な繊維ですので、管理は丁寧にしないといけませんが、ネパールまで赴いて手に入れる価値は充分にある素晴らしい布だと思います。

ネパールでも手工芸で女性たちの自立を促すNGOプロジェクトなどがたくさん行われています。
商店での買いものが心配な人は、そういったところに足を向けてみてはいかがでしょうか?



自分の目で、製品が作られるさまを見ながら買い物をするのも、また格別な楽しみがありますよ♪

2つの角度でお届けしましたが、ネパールは雑貨天国!そして、山や寺院、アートなどの観光天国!そして、今回はご紹介できませんでしたが、インド料理とチベット料理が融合されたネパール料理など、食文化も豊富です。
ヨーグルトをはじめ美味しいものがいっぱいありますので、是非みなさま一度足を運んでみてはいかがでしょう?

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